「あ、」 「あ?」 「あ、いや、何でもない」 ・・・空気が重い。 多分アッシュの眉間の皺が増えた(見えないけど)。 「い、」 「・・・・・・」 あ、無視された。 (「あ」の次が「い」なんて馬鹿にしてるとしか思えないもんなぁ) でもよかった。 今、手が透けてた。 思わず「痛」って言い掛けたけど、 先に「あ」って言っといて良かった。 (さっきの「あ」は本当にくだらないことだったんだけど) じくじくじくじく 額に汗が滲む。 フォニムが乖離する。 「レプリカ」 「ん?」 「踏ん張れるか?」 「――――」 言葉を失うってまさにこんな感じだ。 アッシュは相変わらずこちらに背を向けたまま。 少し遅れて「うん」って言ったらアッシュは「そうか」と言った。 だからまた「うん」と言った。 声が裏返らなかったのは我ながら上出来だと思う。